月のない夜は浜に行ってはいけない。
そんな言い伝えがるのは知っていた。
だが少女はそんなことは口うるさい村の年寄り達の話す言い伝え程度にしか思っていなかった。
何より少女は昼間に浜でなくしたブローチを見つける事で頭がいっぱいだった。
元々は夜の種族であるダークエルフにとっては闇夜とはいえ夕方程度にはあたりを見回すことができる。

だが少女はブローチを見つけることはなかった。 
月のない夜、すなわち新月の夜には、交配のために岩蛸が浜に上がってくるのだ。
無論本来は同種間で性交を行うが、何十匹もの群れであれば、カップリングから外れる雄が出る。
そういったものは周囲で目に付いた同じ程度の大きさの生物を見境なく襲うことになる。
少女はその雄に見つかってしまったのだ。
昼間ならばともかく、いかにダークエルフであっても闇夜で擬態している生物に気付くことはできなかった。

なすすべなく捕獲された少女は、岩蛸が海に帰る夜明けまでの数時間、穴という穴を陵辱し尽くされることになるのだった……。